サンムーン・その17

ORASで殿堂入り前に散々寄り道していた反省もあり、又色々と制約があるので、ストーリーに重点を置いている本作故に、楽しかったこのお話を終わらせるのは大変名残惜しいが殿堂入りを済ませることにした。パーティのレベルは全員50台後半。



四天王はこれまでのキング・クィーンに加え、ゴルファーのカヒリが就任。地元であるハノハノリゾートホテルでの会話で一瞬名前が出てきただけだったので存在感が薄い。タイプは格闘・岩・ゴースト・飛行で、どれも弱点を突ければ大体は一撃で倒せたので意外と余裕、と思っていたら時々倒せないことも。厄介だったのは「がんじょう」→「かいふくのくすり」のコンボ×2で、恒例とはいえ向こうが回復の際はこちらも危ないことが多いため冷や冷やもの。半分くらいの相手はアシレーヌジバコイルが片付け、複合タイプを含めて結構多くの種類が彼らへの弱点を持っていた。バンバドロは中々弱点が突けないため一部のみ、ガラガラも鈍足+耐久無しのため、ゴースト相手でもあまり出番が無かった。アママイコは草4倍ダメージの相手でなければとても出せないので、ライチ戦でのジーランスのみ。


4人倒してあとはチャンピオン…といきたいところだが、まだ出来たばかりでチャンピオンがいない。ということで、創設者であるククイ博士自らがラスボスとして襲いかかる。当たり前だが6体持ちでシナリオ中では最初で最後。タイプも被り無く非常にバランスがいい、ラスボスに相応しい構成。
これまでと違い相手のタイプに偏りが無いので大苦戦。特にジュナイパーは、草・ゴーストとも弱点が突けるガラガラを出すと確実に死に、アシレーヌバンバドロも即死が見えているので困った。何とかガラガラが「せんせいのツメ」効果で先制フレアドライブで倒せたのは良かったが、カビゴン相手にはこちらもカビゴンを差し出したが毎回のように「のしかかり」の麻痺が出る。ジバコイル相手はさっきと同じ「がんじょう」→「かいふくのくすり」。もう最後なので、非売品のPP回復アイテムや「げんきのかたまり」も惜しみなく使う、というかこういうところでないと使いどころが無い。
何とかねじ伏せ、無事に初代アローラチャンピオンに輝く。実に長い道のりだった。



その後はエピローグ。チャンピオン就任記念で、最初のリリィタウンで歴代キャプテン総登場しての宴。なんだかドラクエで世界を救ったあとのようだ。途中でリーリエに誘われて一旦抜け出し、全ての始まりだった吊り橋を越え、奥で「カプ・コケコ」にお参り…のはずが、何故か襲ってくる。これも恒例になりつつあるエンディングバトル。コケコのレベルは博士の手持ちを超える60、しかも準伝説扱いなので、この場で捕まえることも出来るがとても太刀打ち出来ない。ひとまず逃げて捕獲は後日ということに。
何かを言いかけたリーリエだったが言い切れず、そのまま翌日に。突然リーリエがカントーへ去るという報いを受け、ハウと共に港へ。惜別の品として「ピッピにんぎょう」が贈られる。研究所のロフトにあった、あの人形。『こういう時はアローラではなくさよならと言う』と、わざわざ祭壇での去り際を引き合いに出した彼女の言葉に、もう主人公に頼らなくても生きていけるという決意と同時に、あの頃には振り返らないという過去との決別を見た。実際、クリア後はもう二度とリーリエは現れない。しかしあのハウでさえも涙するこんな時でも、主人公は何事も無く棒立ち無表情とはどういうことか。


思い出を振り返るエンディング。最後の最後にシメるのは、『みんなに あえて よかった  あなたに あえて よかった』という、"ほしぐもちゃん"との永訣の2ショットと共に、去りゆく者に贈るリーリエからのラストメッセージ、そして今や懐かしい開始当初の姿での3ショット。彼女に感情移入していたプレイヤーほど嗚咽を漏らしたという。ここまでプレイ時間90時間、厳選などリセットされた部分を含めると96時間かかり、殿堂入りまでの経過時間としては自己最長。努力値調整や厳選、フェスサークルでアトラクションが出るまで放置しなければもっと省けた。






全体の感想。20周年ということで色々な伝統を敢えてぶち壊した本作であったが、ジム廃止も秘伝技廃止も割と受け容れられた方ではないだろうか。特に後者はここまで快適になるとは個人的にも思わなかった。あり得なかった個体値操作も取り入れたものの、その代わりの制約がレベル100限定というのも、あまりにもジャストすぎて丁度いいバランスだった。島巡りというシステムも、これまでのポケモンマスターを目指すとか、世界を救うなどといった重い目標とは異なり、目標こそあるもののそこまで大きいわけでもなく、寧ろ何だか観光気分で旅している感じが出て本当に良かった。


しかしダメなところは全くダメ。ジャギーの多さ、ダブルバトルでの処理落ち、「L=A」状態だとブティックのプレビューで回転出来ない、コマンド一気閉じ・群れバトル・バトルサーチャー・忍び足・コメント自由記述機能・ミニゲームの廃止、新規サブイベントが悉く「作業」、育て屋機能撤廃やメガシンカの大幅縮小…特に「出来たことが出来なくなった」の不便さは大きい。
バトルサーチャーの廃止により、殿堂入り後のイベントも終わらせると、再戦出来るトレーナーは事実上バトルバイキングと四天王のみとなってしまい、スタイリッシュに生まれ変わった海パン野郎や、カキの試練で人気急上昇のやまおとこにも会えない。
処理落ちといったハードの制約はもう仕方ない、恐らく第8世代(早ければダイパリメイク)はもう3DSではないのでそこは我慢。ついでに主人公、いくら喋らずカスタマイズ前提といえど、常時無表情なのは非常に目に余る。後半のイベントムービーのみ表情が変わったが、それをするくらいなら他のシーンでも変えてほしかった。
秘伝技廃止も、今回はゲーム上では『アローラの法律で秘伝技が使えない』という建前だったのだが、果たして次回作ではどうなるのか。秘伝要員という者がいない快適さを知ってしまったのだから、これもまた秘伝技に戻すと反発は避けられない。或いは法律云々といった設定も無く普通にライドが登場するのか。




ゲームシステムもそうだが、何よりもストーリー。従来に比べ大幅に人間ドラマに注力していることがよく分かり、思えば一番最初のオープニングもリーリエの逃避行から始まったのだから、まさにリーリエに始まりリーリエに終わる。最初の出会いの時は何とも思わず、ただついて来る人としか思ってなかったのに、共に旅する過程で徐々に成長を感じられ、特に後半はほぼ一緒に行動し、前半には無かった色んな表情を見せてくれたので余計にそう思った。極めつけに、別れも『アローラではなくさよなら』と成長しきってまるで巣立つように去る。最初から最後まで付き添った感がったため、悲壮感がいつも以上に漂ったものである。普段特段感動なんてしない身だが、だからこそ一番最後のメッセージには感情を甚く揺さぶられた。クリアまでに1ヶ月もの長い時間をかけたので尚更である。
そしてこの一連の流れからふと思い出したのが、発売前に公開されたコンセプトムービー『ジブンを超えよう。』。カントーからやって来た少年がポケモンを通じて地元で友と出会い、成長して大人のトレーナーをも倒し、最終的にカントーに帰還する話。冒頭こそ主人公のオマージュだが、あとは帰還後の交流を除き、このタイトル含めリーリエそのもの。やはりサンムーンの真の主役はリーリエではなかろうか。
本当ならSM2みたいな続編で成長したリーリエと…とも思ってみたが、サンムーンはもう終わった段階で全ての話のきりよくまとまったので、恐らく出ないだろう。出て既に完成された話や設定が崩されても困る。


だが、あまりにもリーリエに傾いた内容故に、主人公の存在が霞んでしまった感もある。トレーナーでないリーリエの代わりに戦い、リーリエの代わりに伝説を捕まえたようなもので、主人公を使い走りにしそのポジションをおびやかす存在となっていたことは否めず、このためリーリエに否定的な意見はかなり多い。あまりにも存在感が大きいため、スカル団なんて完全に空気。同じくハウも、シリアスな場面でも脳天気な発言を繰り返したことから、緊迫する場を和ませたという意見もあれば、幼稚・空気が読めてないとの批判が数知れず。でも、ここまで論争を起こすというのは、それだけキャラが立ち強く印象に残ったということ。ポケモンの人間キャラでここまで存在を大きくした功績は大きい。地味だったりバックが杜撰ならば最初からそんなことは起こらない。




とはいえ、個人的には過去最高のシナリオだったことに過言ない。20年ぶりに違うバージョンをもう1本買ってまたストーリーを楽しんでみたいと思ったほど。全てを知ったあとの2周目は、きっと発見出来なかった何かがあるはず。勿論その時のパーティはフル厳選してメインから送り込む予定。ただ、今は「リーリエロス」に苛まれているので、やるなら大体バンクが解禁してから。