冬のアルペンルート

やっと行くことができたアルペンルート。毎年11月末で運行を終了するため、ギリギリのタイミングだった。今回は富山側から順番に見ていく。

1.電鉄富山立山(富山地方鉄道立山線)


最初は地鉄の電車、アルペンルートでは唯一普通の鉄道。岩峅寺まではどこにでもある田舎の鉄道だが、ここを過ぎると急に山間部に入り登山鉄道に変貌、駅間虚距離もいきなり長くなる。
この時はたまたま1日2便しかない急行便に乗る。車両は元々京阪特急で、左の赤い電車が京阪時代のカラーリング。

2.立山→室堂(立山高原バス)


本来はここから立山〜美女平間のケーブルカーだが、ケーブルカーは点検のため既に一足先に営業終了、美女平〜室堂間の高原バスが立山駅まで延伸して代行運転という形になっている。使われるバスは全車日野で、環境保護のためセレガハイブリッドを積極導入。希少車種である初代セレガ・セレガRのハイブリッドも在籍、更にハイブリッド化前はこちらも珍しい富士重工ボディだった。
立山駅を出てしばらくは普通の山道だが、有料道路に入った途端に傾斜もカーブもきつくなり、同時に雪が積もるようになる。上に上るたびに雪は増えていき、弥陀ヶ原辺りからは積雪が1mを超え完全に真っ白に。天狗平を過ぎると道まで真っ白になり、最早何も見えなくなってしまう。頼りになるのは道の両サイドに目印として立ててある長い棒だけ。あまりに路面の雪が多すぎてスタックに陥ることもあった。ここまで来ると標高は2000mを超え、雲がかなり目の前まで迫ってきている。

終点の室堂は標高2450mで、アルペンルートの最高地点。まだ11月だが完全に極寒の雪山と化しており、この時は積雪2.7m、気温マイナス5度。写真の部分は普段は平原になっているようだが、完全に雪で埋め尽くされており、スキー板でもなければ先に進めないが、しょっちゅう吹く地吹雪のおかげで立っていることもままならない。ここにはホテルがあり泊まることもできるが、高山地帯のため全体的に物価が高く、自販機の缶は200円、500mlペットボトルは250円、500mlの缶ビールは500円。おみやげのポテチは気圧の関係で破裂しそうなくらいパンパン。

3.室堂→大観峰(立山トンネルトロリーバス)


ここから下りに入る。まずは全国でもアルペンルートにしかないトロリーバス。当初からトロリーバスだった関電と違い、こちらは元々は普通のバスで運行していたが、環境保護のため15年前にトロリーバスに転換。足回りは三菱が担当したため、ホイールにはスリーダイヤ、ハンドルは当時のふそう用のもの、ヘッドライトも初代エアロバスやトラックのザ・グレートに使われたものを流用。
見た目こそバスだが、乗って動き出すと完全に電車。普通のバスよりも明らかに加速力が鋭く、車速の安定感も段違い。電車と同じVVVFを装備しているため加速時こそ車のような音が聞こえるが、それ以外はほぼ無音。かなり不思議な乗り物なので何度も乗ってみたくなる。

4.大観峰→黒部平(立山ロープウェイ)


次はロープウェイ。これも普通のロープウェイと違い、間に支柱が全く無くケーブルだけで吊されている、高所恐怖症には想像しただけで腰が抜けそうな構造。搬器と呼ばれる籠の部分は今年になって新しくなったためまだピカピカ。まだこの辺りは標高2000mを切ったくらいなので、ここもまた一面雪景色。

5.黒部平→黒部湖(黒部ケーブルカー)


ケーブルカーもただのケーブルカーではなく、駅を含めた全区間がトンネル、つまり全線屋内になっている。なので感覚的には斜行式のエレベーターに似ている。発車と同時にトンネルの照明が一斉に点くギミックはまるでアニメのよう。

6.黒部湖→黒部ダム(徒歩)


この部分だけ歩きになる。丁度黒部ダムのせき止め部分の真上を歩くことになるので、時間が上手く合えば100mも下に落ちる放水を間近に眺めることができる。他にも遊覧船もあるが、既に営業終了。

7.黒部ダム扇沢(関電トンネルトロリーバス)


再びトロリーバス。こちらは都心部でもトロリーバスが存在した60年代から既に営業しているが、立山トロリーバス化とほぼ同時に車両を新造したため、基本的に見た目は立山の方と同じ。全区間がトンネルである立山に対し、こちらは扇沢周辺の僅かな部分だけだが屋外の区間がある。…しかし下手な写真だ。

8.扇沢長野駅東口(川中島バス)


本来は扇沢の最寄り駅である信濃大町駅までだが、1日4往復だけ扇沢からもう一つ山を越えた長野駅までの急行バスが運行されているのでこれを利用。松本方面へ行くなら信濃大町駅からJRを使えばいいだけだが、長野方面は松本から更に乗り換えなければならず、丁度山を避けるようにV字を描くようなルートで大きく遠回りになる。



今回は初めて行ったため乗り物だけでも十分楽しめたが、運行状況が不安定だったため出発時刻が大きく遅れ、現地での観光する時間が殆どとれなかった。そもそも雪の影響で屋外でもあまり行動できず、また今年の運行終了直前であったため、立山ケーブルカー含め既に営業を止めた店や施設も多かった。これを踏まえ、今度は雪も運休もない夏に行ってみたい。今回とは全く違う光景が見えてくることだろう。