撮影写真より


近代建築シリーズ「南座」。最早説明不要、歌舞伎発祥の地・京都四条河原に長年存在する国内最古の劇場。
今回、「歌舞伎ミュージアム」ということで南座が劇場ではなく美術館として開場していたため、前々から注目していたが、今日が最終日らしく急遽実際に来場してみることにした。というのも、こういう劇場は本来建物としての見学は出来ず、また公演としてでは一等席(S席)で10000円前後、一番安くても5000円以上は払わないと入れないが、今回は1500円で1階ならどこでも座り放題+内部も色々見られる、更に緞帳が上がっている舞台も間近で見られるという貴重な機会。ちなみに元々歌舞伎は全く分からないため、ここに入るのはこれが初めて。最終日ということで、外には通常の公演と同じく「本日千穐楽」の札が貼られていた。
平成3年に改装したためそれほど古くなさそうだが、原型は昭和4年築、このため登録有形文化財に指定されている。内部を大幅に改装したことにより、竣工当時から変わっていないものといえば1階ロビー天井や階段の欄干くらいにしか残っていない。このロビー天井は純和風建築の外観とは裏腹に洋風の近代建築に見られるような文様で飾られている。劇場内部は意外とこぢんまりとしており、舞台幅は18m程度だが、奥行きは15mと客席部分とほぼ同じ。高さは7mだが、緞帳が折り曲げずにそのまま上げるタイプ、いわゆる飛ばし上げ式のため、実際はその倍程度のスペースがある。標準装備の花道を始め、格子天井、周囲を囲む提灯、正面の唐破風と歌舞伎の劇場らしい装備が満載だが、OSKのレビューや来月の公演である韓国のミュージカルなど、たまに全くその雰囲気に似つかわしくない公演もある。舞台上では普段見られないセットの設営・解体、場内ではこれまた普段は見られない歌舞伎の衣装が飾られ、どれも非常に緻密に作られているのがよく分かった。
劇場そのものを公演として使わず展示場として利用する試みは他に例がない。他の劇場、特に古い劇場にも広まってほしいところ。