GT5のS2000(ベースグレード編)

3年前にPS3で発売され、自分も割とやったレースゲーム・グランツーリスモ5(GT5)。2週間後に次回作のGT6が発売されるが、その前にやっておきたいことがある。
GT5はシリーズ最多の1000車種を収録したという触れ込みだったが、蓋を開けてみれば日本車のハンドル位置を変えただけの海外仕様(逆に外車の日本仕様や、過去作の海外版に収録されていた、「海外から見た日本仕様」というものもあり)、殆ど違いが無いグレード違いや年式違いを1車種と数えているため、相当な水増しがなされていた。しかもそのうちの大半が、PS2時代の粗いモデリングを若干手直ししただけの「スタンダードカー」となっており、一から新規モデリングした「プレミアムカー」と比べると相当見劣りする(プレミアムカーは全体の2割以下)。
中でも酷いのがホンダのS2000。ノーマルカーのベースグレード車に欧米仕様・グレード違いがあり、それぞれ複数の年式が設定され、その上大量のチューニングカー・レーシングカーも収録されており、単一車種1世代だけとしては最大の計27種類ものS2000が収録されている。GTシリーズの開発元であるポリフォニーは日産との結びつきが強く、日産車は相当数が収録されているものの、ここまでバリエーション違いが多い車種はさすがにない。
この膨大なS2000を全て回収して写真を撮り見比べてみることにした。スタンダードカーはゲーム内で店売りされているもののランダムで、800車種のうちから毎回6車種くらいしか出てこないため回収はかなり時間がかかった。あまりに多いため、ここでも記事を3分割。ボディカラーは実際に設定されていた「グランプリホワイト」に敢えて統一した。
尚、これら27種類全てが引き続きGT6にも収録されることになっており、しっかりそれぞれ1車種としてカウントされている。

S2000 '99



S2000の初期型。S2000は99年、ホンダ創立50周年を記念し、60年代に生産されていた「S500」「S600」「S800」の血を受け継ぐFRオープンスポーツとして登場。S800以来FR車を一切リリースしなかったホンダにとってはこれが実に30年ぶりのFR車となった。発売当時はこの1グレードのみの展開で、ミッションは当然ながらATなんてなく6MTのみ、価格は338万円と2人乗りと考えると決して安い方ではなかったが、スポーツカーと考えるとかなり安い方だった。
この初期型(AP1)は専用エンジンのF20Cエンジンを搭載。車名の通り排気量は2000cc、それでいて無過給でありながら最高出力250馬力という高出力、且つレッドゾーンは9000回転からという市販車にはあるまじき高回転を誇った。
運転席はフルデジタルメーターを採用。速度はデジタル数字で表示され、それ以外の回転計・燃料計・水温計なども全てランプで表示する仕組みだった。また今では当たり前のエンジンスタートスイッチを標準装備、赤いスイッチを押すとエンジンがかかるさまは当時としては珍しい光景だった。ちなみにこの初期型、車内に時計が一切装備されていなかった。
収録車はホイールもオプション設定されていたBBS製ではなく標準装備品とごくごく普通の仕様。スタンダードカーは内装が作られていないため屋根は開かない。

S2000 '01



最初のマイナーチェンジを受け前期型に移行したS2000。この時は内装中心の変更であったため、スペックや外装の違いは初期型と比べて殆ど無く、99年仕様のモデリングを見ても違いが全く分からない。実際には外装部分ではサイドウインカーがクリアに変更されたようだが、GT5収録モデルは初期型の時点で既にクリアになっている。

S2000 '03



2度目のマイナーチェンジを受けた中期型。ホイールがインチアップした新デザインに変更されたほか、前後ランプとバンパーを変更、楕円マフラーカッターも装備された。尚、剛性強化などに伴い重量が10kgだけ増加している。

S2000 '06



3度目のマイナーチェンジを受けた後期型。型式がAP2、エンジンがF22Cに変更され、同時に排気量が200cc引き上げられたものの、車名はS2200とはならず2000のまま。同時にトルクも上がったものの、逆に最高出力は数馬力下げられている。
S2000のノーマルカーのうちこの後期型のみプレミアムカーとして収録されており、モデリングの出来がスタンダードカーとは大違い。内装も再現されているため、自慢のフルデジタルメーターもしっかり作動する。この画像は通常のレースモードで撮影したものだが、写真撮影専用のフォトモードだと動かす必要がない分更に高精度に作られており、更に屋根も開くため内装もじっくり見られる。
S2000はこのあと07年にもマイナーチェンジを行い最終型に移行したが、これについては収録されていない。きっちり10年作りきった09年、一度もモデルチェンジしないまま生産終了、後継車種も無くホンダのFRと「S」の称号は再び封印されることとなったが、今年の東京モーターショーに出展される「S660」のように、その系譜は確実に次代に引き継がれようとしている。

S2000(EU) '99



ヨーロッパ仕様のS2000。元々開発当時はヨーロッパで何度もテスト走行を繰り返していたというS2000はヨーロッパでもオーナーズクラブが作られるほどの人気ぶり。BMWのZ4やベンツSLKのよきライバル車だった。
日本仕様との違いは、ヨーロッパサイズのナンバープレートとそれに合わせたリアバンパー、フェンダーS2000エンブレムの上にHONDAロゴを追加、ヨーロッパの車では当たり前の装備であるヘッドランプウォッシャー、クリアではなくオレンジ色のサイドウインカー。スペックやボディサイズは日本仕様と全く同じ。

S2000(EU) '01



前期型のヨーロッパ仕様。やはり初期型と何の変化も無い。日本仕様では変更されたサイドウインカーも原色のまま。

S2000(EU) '03



中期型のヨーロッパ仕様。この型からヨーロッパ仕様もサイドウインカーがクリアになった。尚、後期型以降に関しては日本仕様のみで海外仕様は収録されていない。

S2000(US) '99



アメリカ仕様のS2000初期型。S2000アメリカでも大人気を博し、様々なチューニングカーが作られた。日本仕様との違いはヨーロッパ仕様よりも少なく、ハンドル位置以外はフロントウインカー部分が義務化されているサイドマーカーランプ(反射板)を兼ねているため色が濃くなっている程度。

S2000(US) '01



前期型のアメリカ仕様、やはり例によって初期型との違いはほぼ無い。ちなみにアメリカ仕様はボディカラーの種類が日欧に比べ抑えられているが、ゲーム内ではペイントアイテムさえ持っていれば他メーカーの色でも自由に変更出来るためあまり関係ない。

S2000(US) '04



中期型のアメリカ仕様。日欧に比べ1年遅れたため04年仕様となっている。何故かナンバープレートのHONDAロゴがS2000ロゴに変わっており、ゲーム内では日本仕様の中期型との違いはハンドル位置以外だとこれだけになっている。
アメリカ仕様の中期型には日本仕様の後期型に先行してF22Cエンジンが搭載され(同時に型式も先行してAP2型に移行)、排気量や出力・トルク等が変更されているが、ゲーム内では変更されず2000ccのまま。この手のスペック間違いはスタンダードカーでは珍しくなく、特にこのような日本車の海外仕様では、外装やハンドル位置は変更されているのにエンジンは現地仕様とは異なる日本仕様のまま、といった例が散見されている。外観だけは見たもののスペック部分はろくに調べず日本仕様のコピペで済ませたのが原因で、GT6になっても恐らく放置されているはず。